ひまわりの種

とことん自由気ままなメモログ

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蘇芳、臙脂、それから茜。

蘇芳、臙脂、それから茜。
深い赤色をした五指の葉がはらはらと舞いながら落ちていく様を、
ルージュは、そして向かいの席に座るレッドも、ただ何も言わないで眺めている。
――口の中にモノを入れて、もぐもぐと味わっている最中なので、当然といえば当然であった。
手に持つ白い包子(パオズ)はしっとりと蒸し上げられいて、まだ湯気を立てている。
そのまま持っていても火傷をするほどではないが、かと言って冷めたものを食べてもおいしくはない。
ルージュは肉まんにかじり付いた。
「お前はいいところの育ちだろうから、そんなの食べないと思っていたけど、案外気に入っているんだな」
「箸の扱い方にはまだ慣れていないんだ」
マジックキングダムはフォークやスプーンといったカトラリーを使用する食文化が根付いている。
そのためか、シュライクや京などで使われている箸にはまだ慣れていない。
京は観光産業で経済が成り立っているリージョンである。
京ならでは、ということで、伝統的な京料理を振る舞う店は多いが、意外に人を選ぶものだ。
ルージュのように箸の使い方に不慣れな者は多いし、あっさりとした味わいの京料理では物足りないという味覚の持ち主もいる。
そのような観光客のニーズにも合わせて、イタメシや中華といった他リージョン由来の料理を出す食堂もまた多い。
ルージュとレッドが今いるのは、そういった類の軽食を出す店である。
向かいのレッドが器用に箸を遣い、ラーメンを啜って食べている様子を何となく微妙な気持ちで一瞥してから、
ルージュはまた一口、肉まんをかじる。
ふんわりとしていて、ある程度の弾力があり、噛みしめればほんのりとした甘さも感じられる白い皮、
それを更に食べ進めて行くと、また別の味と食感が飛び出してくる。
醤油で味付けされた挽肉に、細かく刻まれたネギにタケノコが混ぜられた肉餡だ。
肉汁と旨味をたっぷりと含んでいて、なおかつ肉だけでは出せない歯応えもあり、それが柔らかく仕上げられた皮と絶妙に合っていた。
「そういえばさ、ルージュ」
一頻りで麺を食べ終えて、どんぶりを持ってスープを味わっていたレッドが、声を掛ける。
「俺、次はIRPOに行こうと思ってるんだ」
「ああ、いつだかに話してくれた、『敏腕刑事』に会いに行くんだね」
ルミナスで妙に意気投合してからというものの、一行の中では年が近いということもあり、ルージュはレッドとそれなりによく話をしている。
元々快活な性格らしいレッドは、ルージュが何も言わなくても、よく喋った。
喜怒哀楽がはっきりとしていて、己の感情をそのまま口にするレッドのことを、ルージュは少しだけうらやましいと思っている。
「それもあるけど、俺、秘術の資質を取ろうと思う」
ルージュは目をぱちくりと瞬かせて、向かいのレッドの、名前とは裏腹に青い瞳を見つめた。
そこにはいつになく真剣な光が宿っている。
「身体を鍛えて、技をつけてりゃ、ブラッククロスの奴らをぶちのめせると思ってたけど、
この前、奴らと戦った時に、それだけじゃ勝てないと思った」
ルージュはゆるく頷く。ブラッククロスという組織はこのリージョン界にて暗躍する巨大犯罪組織だ。
ルージュ自身の事情には全く関係ない輩だが、レッドにとっては家族の仇であるらしい。
実際、レッドと行動を共にしているからか、ブラッククロスの構成員と戦闘になったことは幾度かある。
相対した面々の中には、明らかに幹部と思われる異形の者もいたが、そういう時に限ってレッドはどこかで伸びていたのか、姿を現さず、
その代わりなのか何なのか、近頃話題となっているらしいアルカイザーというヒーローが加勢してくれていた。
アルカイザーの技の冴えとレッドのそれとは、明らかな差がある。それは武門には疎いルージュでもよく分かる。
レッドがアルカイザーと同等の実力を付けるならば、武道だけではなく、他の力を求めることも必要だろう。
「君と行ったバカラで金のカードはもう持っているし、
ワカツはワカツ出身の人がいなければそもそもシップが飛ばない。
ヨークランドのことは、僕もまだ調べが足りないんだ。ここのところ、荒事が多かったから。
君の知り合いがいるIRPOに行くのは、悪くないね」
「そうだろ? そうとなったら、善は急げだ。食べ終わったら出発な」
「分かったよ」
ルージュはまた一口と肉まんを齧り、レッドも最後の一滴までスープを飲み干そうとどんぶりを傾ける。
ああ、これでやっと事が進みそうだ。
肉まんを食べ終え、ルージュは胸に手を当てる。
そこには、金貨の描かれたカードと、まだ何の絵柄も浮かび上がっていない白い3枚のカードを忍ばせていた。
(了)

#掌編

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リージョン界に中華料理があるのかというツッコミが入りそうですが、
イタリアという国がないのにイタメシ屋があるし、なんならキドニーパイだって食べられているので、
現実世界にある料理は大概あるものという前提で書いています。
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